造船・船舶部品業界は、貨物船、タンカー、コンテナ船、LNG運搬船、フェリー、作業船、艦艇、巡視船などの建造・修繕と、それらに搭載される舶用エンジン、航海計器、ポンプ、バルブ、プロペラ、操船システム、電装品などを製造する重要産業です。
日本は海上輸送に大きく依存しており、造船業と舶用工業は海運、港湾、エネルギー、安全保障、地域雇用を支える基盤産業といえます。一方で、中国・韓国勢との競争、熟練人材不足、設備更新負担、次世代燃料船への対応、部品サプライチェーンの強化などを背景に、M&Aによる再編や技術獲得の重要性が高まっています。
このページでは、造船・船舶部品業界におけるM&A事例や動向を紹介し、成功のポイントについて解説します。
造船・船舶部品業界は、船舶の設計、建造、修繕、改造に加え、船舶に搭載される各種機器・部品を製造する産業です。造船所は、船体設計、鋼材加工、ブロック建造、艤装、試運転、引渡しまでを担い、舶用工業メーカーはエンジン、発電機、航海計器、ポンプ、バルブ、操舵装置、配管、電装品などを供給します。
国土交通省は、造船業を海上輸送を支える重要産業と位置付けています。造船所は資機材の9割超を国内から調達し、多数の舶用メーカーや協力事業者と海事クラスターを形成しているため、地域経済や雇用への波及効果も大きい業界です。
また、国土交通省と内閣府は2025年12月26日に「造船業再生ロードマップ」を策定し、現在約900万総トンの年間建造量を2035年に1,800万総トンへ引き上げる目標を掲げました。今後は、船舶建造体制の強靭化、人材確保、脱炭素化、需要確保、海外連携が重要テーマになります。
造船・船舶部品業界でM&Aを行うメリットは、建造能力、設計技術、舶用部品の供給力、顧客基盤を短期間で獲得できる点です。造船所や舶用機器メーカーには、長年蓄積された設計ノウハウ、工程管理、品質保証、船級対応、顧客仕様への対応力があり、これらは一から構築するには時間がかかります。
また、造船会社が舶用エンジンや航海計器などの部品メーカーを取り込むことで、重要部品の安定調達や次世代船舶への共同開発が進めやすくなります。設計会社、修繕会社、部品メーカーをグループ化すれば、建造からアフターサービスまで一貫した提供体制を構築できます。
後継者不足や設備更新に悩む中小造船所・舶用部品メーカーにとっては、M&Aが技術承継、雇用維持、取引先との関係維持の手段になる点も大きなメリットです。
造船・船舶部品業界のM&Aには、統合コストや大型設備投資のリスクがあります。造船所ではドック、船台、クレーン、溶接設備、塗装設備などが必要であり、買収後に老朽設備の更新や安全対策投資が発生する場合があります。
また、船舶は受注から引渡しまでの期間が長く、為替、鋼材価格、エネルギー価格、資材調達、船価変動の影響を受けやすい業界です。受注済み案件の採算や契約条件を十分に確認しなければ、買収後に損失が発生する可能性があります。
さらに、造船・舶用機器は船級協会、規制、品質保証、安全基準への対応が不可欠です。M&A後に設計体制や品質管理体制を急に変更すると、顧客や船級対応に支障が出る可能性があるため、慎重な統合計画が求められます。
今治造船は、JFEホールディングスおよびIHIが保有するジャパン マリンユナイテッド(JMU)の株式の一部を取得することで合意しました。取引成立後、JMUへの議決権比率は今治造船60%、JFE20%、IHI20%となる予定です。
今治造船とJMUは、2021年に資本業務提携を行い、共同営業設計会社である日本シップヤードを設立してきました。今回の子会社化により、国内造船大手同士の連携をさらに深め、中国・韓国メーカーとの競争に対応する体制を強化する狙いがあります。
常石造船は、2025年6月30日に三井E&Sから三井E&S造船の全株式を取得し、完全子会社化しました。これに伴い、三井E&S造船は常石ソリューションズ東京ベイへ社名変更しています。
両社は2021年10月から資本提携を行い、コスト競争力と技術力の相乗効果を目指して協業してきました。完全子会社化により、商船設計、舶用機器、新燃料関連エンジニアリング、操船システム、DX・モニタリングなどの技術をグループ内で一体運用し、競争力強化を図る事例です。
今治造船とカナデビアは、カナデビアが保有する日立造船マリンエンジン(HZME)の株式の一部を今治造船が取得することで合意しました。2026年3月31日に取引が完了し、今治造船の議決権比率は60%となりました。
HZMEは、舶用原動機の製造・アフターサービスを行う企業で、2022年にカナデビアと今治造船の共同出資により設立されました。本件は、造船会社が舶用エンジンという重要部品領域への関与を強め、安定供給、資材調達、カーボンニュートラル対応技術の開発を進める垂直統合型M&Aです。
造船業界では、中国・韓国メーカーとの競争が激化する中、国内企業同士の連携や再編が進んでいます。国土交通省も、我が国造船業が国際競争に対応するためには、企業の垣根を越えた協業、集約、統合を進める必要があるとしています。
今後は、設計、調達、建造、修繕、営業を共同化し、スケールメリットを出すM&Aや資本提携が増える可能性があります。単独企業で大型投資を行うより、グループ化によって設備・人材・技術を有効活用する流れが強まっています。
船舶分野では、LNG燃料船、メタノール燃料船、アンモニア燃料船、水素関連船、液化CO2運搬船、自動運航船など、次世代船舶への対応が重要になっています。新燃料船では、燃料タンク、配管、エンジン、安全システム、制御技術など、船体と部品の一体開発が必要です。
そのため、造船会社と舶用部品メーカー、エンジニアリング会社、制御システム会社が連携するM&Aが進みやすくなっています。技術獲得型M&Aは、脱炭素船の受注競争において重要な成長戦略となるでしょう。
造船業は、舶用エンジン、ポンプ、バルブ、発電機、航海計器、制御装置、鋼材、塗料など、多数の部品・資材に支えられています。重要部品の供給が遅れると、船舶全体の建造工程に影響が出るため、サプライチェーンの安定確保はM&Aの大きな目的になります。
特に舶用エンジンや航海計器など、安全性・認証・技術継承が求められる部品分野では、買収によって供給網や開発力を確保する動きが注目されています。
造船業では、受注から引渡しまでの期間が長く、契約時と建造時で資材価格や為替が変動することがあります。M&Aでは、受注残、船価、原価見積、鋼材価格、為替前提、納期遅延リスク、違約金条項などを確認し、買収後に不採算案件を抱えないようにすることが重要です。
船舶や舶用部品は、船級協会の規則、国際条約、安全基準、顧客仕様に基づいて設計・製造されます。M&A前には、船級対応の実績、品質保証体制、検査記録、トレーサビリティ、不具合対応履歴を確認し、買収後も安定して製品を供給できる体制を整える必要があります。
造船・舶用工業では、設計者、溶接技能者、艤装担当、品質管理者、サービスエンジニアなどの経験が企業価値に直結します。買収後にキーパーソンが離職すると、建造・修繕・部品供給に影響が出るため、処遇、役割、引き継ぎ期間を早めに明確化しましょう。
2026年4月20日、ミライアルは、布谷舶用計器工業の全株式を取得し、子会社化することを発表しました。布谷舶用計器工業は、磁気コンパスなどの舶用航海計器を製造し、国内外の造船所や海事関連企業に製品を提供している企業です。
ミライアルは、半導体関連製品を主力としつつ、社会インフラ事業への投資を進めています。本件により、舶用航海計器という海事インフラ領域を取り込み、同社の高機能樹脂成形加工技術や精密切削加工技術との融合による製品高度化も期待されます。
この事例は、造船そのものだけでなく、航海計器や制御部品などの船舶部品分野でもM&Aが進んでいることを示しています。次世代船舶や環境規制対応が進む中、舶用部品メーカーの技術価値は今後さらに高まる可能性があります。
参照元:M&A Online「ミライアル、舶用航海計器メーカーの布谷舶用計器工業を子会社化」
まず、対象企業の事業領域、造船設備、部品製造能力、受注残、主要顧客、設計技術、品質保証体制、人材構成を確認します。そのうえで、M&Aの目的が建造能力拡大なのか、部品の安定調達なのか、次世代船舶技術の獲得なのか、事業承継なのかを明確にしましょう。
候補企業を選ぶ際は、自社との補完性を重視します。造船所であれば船種、ドック能力、立地、修繕対応力、設計力を確認し、舶用部品メーカーであれば製品の認証、船級対応、顧客採用実績、アフターサービス体制を確認します。交渉段階では、受注済み案件や重要顧客への影響にも配慮する必要があります。
契約締結後は、設計、調達、生産、品質保証、営業、アフターサービスの統合を段階的に進めます。造船・舶用部品業界では、進行中プロジェクトへの影響を最小限に抑えることが重要です。買収直後は既存の現場体制を維持し、品質・納期・顧客対応を安定させたうえで、徐々にシナジーを出していきましょう。
造船・船舶部品業界のM&A価格は、企業規模、保有設備、受注残、収益力、技術力、船級対応実績、主要顧客、部品の希少性によって大きく変動します。中小の舶用部品メーカーや修繕会社では数千万円から数億円規模の案件もありますが、造船所やエンジンメーカー、設計会社などでは数十億円から100億円超の案件になることもあります。
評価方法としては、純資産を基準にした評価、営業利益やEBITDAを基準にした倍率法、将来キャッシュフローを基にしたDCF法などが用いられます。ただし、造船業界では、単年度利益だけでなく、受注残の採算、設備状態、技術者の継続性、船級認証、顧客との長期関係が企業価値に大きく影響します。
費用としては、M&A仲介会社やFAへの報酬、弁護士・会計士費用、技術デューデリジェンス費用、環境・設備調査費用、契約書作成費用、PMI費用が発生します。買収後に設備更新、安全対策、DX投資、人材採用が必要になる場合もあるため、買収価格だけでなく総投資額を見込んだ資金計画が重要です。
造船・船舶部品業界では、設備規模や売上だけでなく、実際に安定して建造・供給できる能力が重要です。ドックや工場の稼働状況、協力会社網、資材調達力、品質管理体制を確認し、買収後も継続できるかを見極めましょう。
今後は、LNG、メタノール、アンモニア、水素、CO2輸送、自動運航などへの対応が競争力を左右します。M&Aでは、対象企業が次世代燃料、安全設計、制御システム、環境規制にどこまで対応できるかを確認することが重要です。
造船・船舶部品業界のM&Aでは、受注契約、船級対応、設備評価、技術承継、輸出管理、環境規制など、専門的な確認項目が多くなります。造船・舶用工業や製造業に詳しいM&A仲介会社、FA、弁護士、会計士、技術アドバイザーを活用することで、リスクを抑えながら条件交渉や統合を進めやすくなります。
ここまで、製造業に強い3社をご紹介してきました。
それぞれの強みが異なるため、自社の「現状の課題」と「譲れない条件」に合わせて選ぶことが重要です。
各社の料金構造の違いを一目でわかるように整理しました。ぜひ参考にしてください。
| 項目 |
ベネフィットM&A コンサルタンツ |
バトンズ | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|---|
| 料金タイプ | 完全成功報酬型 | プラットフォーム利用型 | 着手金+成功報酬型 |
| 着手金 | 0円 | 0円 | あり |
| 月額報酬 | 0円 | 0円 | あり |
| 中間金 | あり (※不成約の場合は全額返金) |
なし | あり |
| 成功報酬 | レーマン方式成功報酬額で1%~5% | 基本利用料は無料。 オプションのサポートサービス(※)をつけるなら、 成約価格の5%(税込5.5%) |
レーマン方式成功報酬額で1%~5% |
| こんな人におすすめ | 費用リスクを負わずにじっくり相談したい方 | コストを抑えて早く相手を見つけたい方 | 多少コストがかかっても最大手の安心感が欲しい方 |
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