製造業におけるM&Aでは、単なる企業統合ではなく「1+1が3になる価値創造」が鍵。例えば、技術力や特許、販路、人材を相互補完することで、新製品開発やコスト削減が実現しやすくなる、というイメージです。
この発想を持つことで、売上拡大や利益率向上などの直接的な成果だけでなく、品質強化や安定供給、組織体制の高度化などの企業の成長基盤が構築されます。特に製造業は設備や人材の投資に時間がかかる業種なので、M&Aによる即効性のあるシナジー創出は魅力的です。
製造業特有のシナジーとして以下が挙げられます。
1.生産拠点の最適化:工場の立地や設備能力を補完し、稼働率向上と物流コスト削減を実現。
2.技術横展開:片方の企業の高付加価値技術を他社の製品ラインに応用し、商品力展開の拡大へとつなげる。
3.購買力強化:材料や部品の一括調達によりスケールメリットを発揮。
4.販路拡張:既存の販路を統合し、新市場や新顧客層へスピーディーに進出。
これらは製造業が持つ「設備」「技術」「購買」「販路」という主要な経営資源を、M&Aにより効率的に再構築することで得られる典型的なシナジーです。
M&Aには主に「水平統合」と「垂直統合」の2つの戦略があります。それぞれの戦略において、製造業では次のようなシナジーが期待されます。
同一業界・同一市場の競合企業同士で合併。製品ライン拡充、製造規模拡大、重複部門の整理でコスト削減や価格競争力向上が期待できます。
サプライチェーン上の前後工程を持つ企業間で統合。部品調達から製品完成までの一貫体制で品質管理や納期対応力が飛躍的に高まり、外部依存からの脱却可能性も視野に入ります。
どちらを重視するかは、自社の経営課題や成長フェーズにより異なりますが、どちらであっても「どのシナジーを最大化するか」が、M&A戦略の検討に向けたベースとなります。
製造業M&Aでシナジーを追求する際には、次の課題に注意が必要です。
品質・納期意識や現場主義の違いが融合の障壁になりうるため、早期に共通ビジョンを設定する必要があります。
異なる設備規格や生産方式では一体化に時間が掛かり、当初の想定通りに稼働率が上がらないリスクもあります。
統合作業で競合顧客との関係整理が必要になる場合もあります。失注リスクも視野に入れた調整が重要です。
M&A後の実務実行(PMI)が不十分なままでは、想定していたシナジーを獲得できない可能性もあります。専門チームや外部支援の活用が不可欠です。
後継者不在と海外拠点への将来的な不安を抱えていた横浜テープは、社員の雇用維持と事業継続を重視し、安定した経営基盤を求めていました。
グローバル展開に強みを持つ三景社(伊藤忠グループ)がは、横浜テープの製品力や組織を高く評価し、M&Aを実施。両社の事業特性が補完関係にある点も決め手となりました。
海外販路の拡大と経営の安定化が同時に進み、従業員の雇用も継続。M&A後もブランドと事業体制は維持され、安定感のある成長を維持しています。
参照元:日本M&Aセンター公式HP(https://www.nihon-ma.co.jp/page/interview/yokohamatape-sankeicoltd/)
金属部品製造業を営む譲渡企業。3代目社長が高齢となる中で後継者は不在。社長は地域雇用への責任感も強く、事業を継続してくれる企業を模索していました。
同業界で卸売業を展開していた買手企業が、製造機能の内製化を狙って同社の譲受を検討。両社の事業内容と理念の親和性、地理的な近さも決め手となり、M&A実行に至りました。
買手企業から役員が派遣され、事業連携はスムーズに進行。現在も良好な関係を維持しています。買手企業は今後の事業拡大に向け、同様のM&Aを引き続き検討していく方針です。
参照元:SBI 辻・本郷M&A株式会社公式HP(https://www.sbithma.co.jp/cases-detail/90/)
製造業がM&Aで成長を目指す際には、「何をつなぐのか」「なぜ統合するか」とった戦略設計を明確にすることが大事。設備、技術、販路、人材などの経営資源を再確認したうえで、まずは水平/垂直統合の適切な選択を行い、PMIを通じて文化・実務の融合を慎重に進めることがM&Aの基本となります。
シナジーを目論んだ戦略的M&Aは、ときに絶望を希望へと変える魔法の施策。成功すれば、企業の成長ステップが飛躍的に向上します。
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