近年、製造業がスタートアップ企業を買収する動きが加速しています。その背景にあるのは、自社内だけでは生み出せない革新的な技術や新たな発想を、外部から迅速に取り込みたい、とするニーズです。
AIやIoT、ロボティクス、カーボンニュートラルといった新分野は変化のスピードが速く、社内でゼロから開発するには膨大な時間とコストを避けられません。M&Aを通じ、すでに独自技術を持つスタートアップとの協働体制を作り上げれば、時間とコストを削減しながら新市場への参入が可能になります。
スタートアップとのM&Aは、単なる「補完」としてのM&Aではなく、製造業の変革を加速させるための「攻めの一手」。小さな買収劇でも会社の将来像は一気に変化する可能性があります。
双方の強みの融合による相乗効果こそ、製造業とスタートアップのM&Aがもたらす大きな魅力。たとえば、製造業が持つ量産体制・品質管理能力と、スタートアップが持つ柔軟性・スピード感がハイブリッドされれば、革新的な製品開発を迅速に実現できる可能性も高まります。開発段階から両社が連携すれば、より市場ニーズに即したモノづくりが可能となるかもしれません。
なおM&Aは、技術力や設備の融合だけではなく、人材の融合も伴います。企業文化の異なる両社が一体化すれば、社内全体に良い刺激が発生し、社員の意識変革につながる可能性もあるでしょう。
製造業がスタートアップと組む大きなメリットの一つが、すでに形になりつつある技術や製品アイデアをスピーディーに自社へ取り込めること。通常、新製品の市場投入には、企画や開発、試作等も含めて年単位の時間を要しますが、スタートアップとのM&Aにより、市場投入までの期間は大幅に短縮されます。
たとえば、省エネ素材や次世代バッテリー、スマートファクトリー用のシステムなど製造業が新領域に進出したい場合、自社単独での開発ではリードタイムが長くなりがち。そこに既存技術や試作段階にある製品を持つスタートアップをM&Aで取り込めば、事業化までの時間を大きく圧縮することが可能となります。
スタートアップには、既存の枠にとらわれない発想やスピード感を持つ人材、また目的志向の強い優秀な人材が集まっています。やや古い体質が残っているとされる製造業が、M&Aを通じてこれらスタートアップの人材と文化を取り込めば、既存組織にはない刺激がもたらされることはほぼ確実。社内に変革の風が吹き込むことでしょう。
とくに、若手技術者やエンジニア、デジタル分野の専門家は、自社採用ではなかなか確保が難しい人材とされています。M&Aにより、これら人材を一括して確保できれば、単なる技術移転にとどまらず、企業全体の成長スピードが一気に加速することでしょう。
M&Aの成果を最大化するには、単に優れた技術を持つ企業を選ぶだけでなく、今後伸びる市場に根差したスタートアップを見極めることが大切です。
たとえば、脱炭素、再生エネルギー、EV部品、AI・IoTといった分野は、今後の製造業にとって不可欠な領域。それら市場ですでに活躍しているスタートアップは、技術面だけでなく、市場ニーズとの接点を持っている点でも買収の価値は大です。
単発的・突発的な買収ではなく、まずは自社の中長期戦略に照らし、どの分野で、どの技術を、どう取り込むかを明確にすることが大切。、市場の将来も踏まえ、「これから伸びる業界」とのM&Aを目指しましょう。
スタートアップM&Aを成功させるには、買収後に「取り込む」のではなく、「活かす」という視点が不可欠です。古い体質の製造業にありがちな厳格なルールや慣習を無理に押し付けてしまうと、スタートアップ本来のスピード感や柔軟性が失われてしまう可能性があるのでご注意ください。
たとえば、独自の開発フローや働き方を一定程度尊重したり、小規模なプロジェクト単位で裁量を与えたりなど、自由度の高い環境を維持する考え方が大事。常に、イノベーションの芽が育ちやすい環境は何か、を考えてPMIを進めましょう。
これからの製造業とスタートアップのM&Aには、「管理する」のではなく「共創する」ことが求められています。
製造業にとってスタートアップM&Aは、革新の種を活かしつつ自社の強みと融合させる強力な成長戦略です。スタートアップの技術力・人材・スピード感のすべてを一体で取得すれば、製造業の大きな飛躍に向けた第一歩になるでしょう。
ただし、成功には「市場を見る目」と「活かす器」が必要です。スタートアップの良さを決して潰さず、むしろ大きく引き出す統合戦略こそが、スタートアップM&Aを成功させる重要な視点と考えましょう。
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