紙加工業界は、段ボール、紙器、紙袋、紙製パッケージ、紙什器、ラベル、紙管、衛生用紙加工品など、紙や板紙を加工して多様な製品を製造する産業です。食品、医薬品、化粧品、日用品、通販、物流、小売、販促など幅広い分野を支えており、製造業や流通業に欠かせない存在です。
一方で、ペーパーレス化による印刷・情報用紙需要の減少、原紙価格・エネルギー費・物流費の上昇、人手不足、設備更新負担などを背景に、M&Aによる事業承継や生産体制の強化、海外展開、付加価値商品の拡充が重要になっています。
このページでは、紙加工業界におけるM&A事例や動向を紹介し、成功のポイントについて解説します。
紙加工業界は、紙や板紙を印刷、抜き、貼り、折り、製袋、製函、断裁、表面加工、組立などの工程で加工し、包装資材や販促資材、生活用品などを製造する業界です。代表的な製品には、段ボールケース、化粧箱、紙袋、紙製容器、紙什器、POP、紙管、封筒、紙おむつ、ティッシュ、トイレットペーパーなどがあります。
紙加工品は、商品を保護し、運び、見せ、販売するための役割を持つものが多い点が特徴です。そのため、単なる加工技術だけでなく、強度設計、印刷品質、デザイン、環境対応、短納期対応、小ロット多品種対応、物流効率化まで含めた提案力が競争力になります。
日本製紙連合会の「2026年 紙・板紙内需見通し報告」によると、2026年の紙・板紙内需は約1,999万トン、前年比2.7%減の見通しです。用途別では、グラフィック用紙は前年比6.8%減と減少が続く一方、パッケージング用紙は約1,196万トン、前年比1.0%減、衛生用紙は約210万トン、前年比0.1%増とされています。
紙加工業界でM&Aを行うメリットは、生産設備、加工技術、顧客基盤、販売エリアを短期間で獲得できる点です。紙器や段ボール、紙袋などは、抜き型、貼り加工、製袋機、印刷機、打抜機、グルアーなど専用設備が必要であり、既存企業を取得することで新規設備投資や立ち上げ期間を抑えられます。
また、食品、医薬品、化粧品、EC、アパレルなど、特定分野に強い紙加工会社をグループ化することで、既存顧客への提案力を高められます。紙製パッケージや紙什器では、設計・デザイン・製造・組立・納品まで一貫対応できる体制が評価されるため、M&Aによって対応範囲を広げる効果も期待できます。
後継者不足に悩む中小企業にとっては、従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら、長年培った加工ノウハウを次世代へ引き継ぐ手段にもなります。
紙加工業界でM&Aを行う際のデメリットには、設備更新負担や価格転嫁の難しさがあります。紙加工設備は大型で高額なものも多く、老朽化した設備を買収後に更新する場合、追加投資が必要になります。
また、原紙価格、電気代、人件費、物流費の上昇を販売価格に反映できない場合、収益性が悪化するリスクがあります。取引先ごとの仕様や納期対応が細かく、特定の営業担当者や工場責任者にノウハウが集中しているケースもあるため、買収後の人材流出には注意が必要です。
さらに、食品・医薬品向けパッケージでは衛生管理や品質保証が重視され、環境対応製品では素材表示やリサイクル性への配慮も求められます。M&A前には、設備、人材、顧客契約、品質管理、価格改定余地を丁寧に確認することが重要です。
日本創発グループは、エクセルパック・カバヤの株式譲受けおよび第三者割当増資の引受けにより、同社を連結子会社化することを決定しました。エクセルパック・カバヤは、岡山県岡山市に本社を置き、板紙印刷、パッケージ製造、包装資材販売を行う企業です。
取得価額は、普通株式19億6,000万円、アドバイザリー費用等5,500万円を含む合計20億1,500万円とされています。日本創発グループは、紙器パッケージ製造機能を取り込むことで、印刷・販促・プロダクト開発と包装資材を組み合わせた高付加価値サービスの提供を目指しています。
ダイナパックは、ベトナム・ハイフォン市のHoang Hai Vietnam Packaging Joint Stock Companyの株式80%を取得し、子会社化することを決定しました。Hoang Hai Vietnam Packagingは、段ボールケースの製造販売を行う企業です。
ダイナパックは、段ボール、紙器、軟包装材、紙製緩衝材などの包装資材を製造・販売しており、中期経営計画でM&Aの積極的な実施と国内・海外生産拠点の拡充を掲げています。本件は、経済成長が見込まれるベトナムで段ボール製造機能を拡大し、海外事業を強化するクロスボーダーM&Aの事例です。
レンゴーは、包装資材の製造・販売を行う新光の発行済株式100%を取得し、子会社化しました。新光は、セレクトショップを展開するビームスグループの製函事業会社として、包装資材の製造販売を担ってきた企業です。
レンゴーは、段ボール、段ボール箱、紙器、その他紙加工品の製造・販売を行う大手メーカーです。本件M&Aにより、新光とレンゴーの直営工場、グループ会社との連携を強化し、段ボール事業のさらなる拡充を図る狙いがあります。既存事業に近い包装資材メーカーを取り込み、生産・販売体制を強化する事例です。
紙加工業界では、新聞、出版、帳票、チラシなどの印刷・情報用紙関連の需要が縮小する一方、包装資材や衛生用紙関連では一定の需要が続いています。日本製紙連合会の見通しでも、グラフィック用紙は20年連続のマイナスが予想される一方、パッケージング用紙はEC、加工食品、脱プラスチックの動きなどが下支え要因として挙げられています。
そのため、印刷会社や紙加工会社が、紙器、紙袋、段ボール、紙什器などのパッケージ領域を取り込むM&Aが増えやすい環境です。需要が減る分野から、包装・販促・環境対応分野へ事業を転換する動きが進んでいます。
環境配慮の観点から、プラスチック包装を紙素材へ置き換える動きが広がっています。紙製緩衝材、紙製容器、紙製袋、紙製什器、リサイクルしやすいパッケージなどは、食品、化粧品、日用品、小売業界で採用が進みやすい分野です。
ただし、紙化には強度、耐水性、印刷適性、コスト、物流効率の課題もあります。M&Aでは、素材選定や設計力、特殊加工技術、環境対応商品の開発実績を持つ企業の価値が高まりやすくなっています。
紙加工品は、かさばる製品が多く、物流費の影響を受けやすい業界です。そのため、需要地に近い工場や配送拠点を持つことが競争力になります。段ボールや紙器では、地域密着の顧客基盤を持つ中小企業を買収し、近隣工場との連携や配送効率化を図る事例が見られます。
国内では地域補完型M&A、海外では成長市場の生産拠点獲得を目的としたクロスボーダーM&Aが進んでいます。特にASEANや欧州では、現地顧客への提案力や生産能力を高める買収が注目されています。
紙加工業界では、顧客ごとに箱の寸法、紙質、印刷色、強度、梱包方法、納品条件が細かく決まっていることがあります。M&A後も品質と納期を維持するためには、仕様書、加工条件、抜き型情報、検査基準、過去の不良対応履歴を整理し、属人化したノウハウを可視化することが重要です。
紙器、段ボール、紙袋などの製造には、印刷機、打抜機、グルアー、製袋機、断裁機、検査装置などが必要です。M&A前には、設備年式、稼働率、保守状況、更新予定、修繕費を確認し、買収後に必要な投資額を見込んでおく必要があります。
紙加工業界では、原紙価格や物流費、電気代、人件費の上昇が収益を圧迫します。M&A後の利益改善には、価格改定の余地、主要顧客との契約条件、原価管理体制、歩留まり改善、生産効率化を確認することが欠かせません。
2026年5月1日、日本創発グループの連結子会社であるリングストンは、村上の製袋事業を譲受しました。村上は、紙袋製造販売および紙加工品の製造販売を行う企業で、福島県の白河工場で製袋事業を展開してきました。
リングストンは、手提げ袋や包装資材、販促商品の企画・製造・販売を行う企業で、ショッパーや商品パッケージなどの企画から製造・加工までをワンストップで提供しています。
本件は、紙袋の製造機能を取り込み、紙製袋と包装資材の供給体制を強化する事業譲受の事例です。紙加工業界では、製品企画、デザイン、印刷、製袋、納品までを一体で提供する体制づくりが進んでおり、今後も周辺工程を取り込むM&Aが増える可能性があります。
参照元:日本M&Aセンター「日本創発グループ子会社のリングストンが村上の製袋事業を譲受」
まず、対象企業の製品領域、主要顧客、設備、加工技術、品質管理体制、収益性、従業員構成を確認します。そのうえで、M&Aの目的が事業承継なのか、包装分野への参入なのか、地域補完なのか、海外展開なのかを明確にしましょう。
候補企業を選ぶ際は、製品ライン、顧客業界、設備の補完性、配送エリア、品質管理力を重視します。紙加工業界では、取引先との長期的な関係や納品対応力が重要なため、交渉段階から従業員や主要顧客への影響を慎重に検討する必要があります。
契約締結後は、従業員への説明、取引先への周知、生産計画の調整、品質基準の統一、購買条件の見直しを段階的に進めます。買収直後は、既存の品質・納期・担当者を維持しながら、徐々に購買、生産、営業のシナジーを出していくことが望ましいです。
紙加工業界のM&A価格は、企業規模、収益力、保有設備、主要顧客、製品領域、工場立地、技術者数、受注の安定性によって変動します。中小の紙器・紙袋・段ボール加工会社では数千万円から数億円規模の案件が多い一方、食品・医薬品向けの高品質パッケージや海外拠点を持つ企業では、10億円を超える案件になることもあります。
評価方法としては、純資産を基準にした評価、営業利益やEBITDAを基準にした倍率法、将来キャッシュフローを基にしたDCF法などが用いられます。ただし、紙加工業界では、単年度利益だけでなく、設備の状態、顧客との継続取引、価格転嫁余地、配送効率、加工ノウハウも企業価値に影響します。
費用としては、M&A仲介会社やFAへの報酬、弁護士・会計士費用、デューデリジェンス費用、契約書作成費用、PMI費用が発生します。買収後に設備更新、工場改修、品質管理システム導入、人材採用が必要になる場合もあるため、買収価格だけでなく総投資額を見込むことが重要です。
紙加工業界では、設備の状態や生産能力、顧客との継続取引が企業価値を左右します。買収前には、設備更新の必要性、主要顧客への依存度、価格改定の余地を確認することが重要です。
紙加工品は、商品発売日や物流スケジュールに合わせた納品が求められるため、M&A後に品質や納期が乱れると顧客離れにつながります。既存の現場責任者や営業担当を活かし、安定供給を優先しながら統合を進めましょう。
紙加工業界のM&Aでは、設備、原価管理、顧客仕様、価格転嫁、労務、環境対応など、製造業特有の確認項目が多くあります。紙・パルプ、包装資材、印刷、製造業に詳しいM&A仲介会社、FA、弁護士、会計士を活用することで、リスクを抑えながら条件交渉や統合を進めやすくなります。
ここまで、製造業に強い3社をご紹介してきました。
それぞれの強みが異なるため、自社の「現状の課題」と「譲れない条件」に合わせて選ぶことが重要です。
各社の料金構造の違いを一目でわかるように整理しました。ぜひ参考にしてください。
| 項目 |
ベネフィットM&A コンサルタンツ |
バトンズ | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|---|
| 料金タイプ | 完全成功報酬型 | プラットフォーム利用型 | 着手金+成功報酬型 |
| 着手金 | 0円 | 0円 | あり |
| 月額報酬 | 0円 | 0円 | あり |
| 中間金 | あり (※不成約の場合は全額返金) |
なし | あり |
| 成功報酬 | レーマン方式成功報酬額で1%~5% | 基本利用料は無料。 オプションのサポートサービス(※)をつけるなら、 成約価格の5%(税込5.5%) |
レーマン方式成功報酬額で1%~5% |
| こんな人におすすめ | 費用リスクを負わずにじっくり相談したい方 | コストを抑えて早く相手を見つけたい方 | 多少コストがかかっても最大手の安心感が欲しい方 |
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