製造業のオープンイノベーションとは？手法と成功のポイント

製造業におけるオープンイノベーションとは？その意義を解説

オープンイノベーションとは自社外の知恵を活用すること

オープンイノベーションとは、自社だけで技術開発や商品企画を進めるのではなく、外部の知恵や技術、ノウハウを取り入れて新たな価値を創出する考え方を言います。具体的には、スタートアップや大学、他企業、自治体などとの連携を通じて、自社にはない視点やスピード感を取り込む取り組みがオープンイノベーションです。

市場ニーズの変化が激しい分野や製品開発のスピードが早い分野では、自社リソースだけで迅速・的確に対応することは困難。オープンイノベーションの考え方に立ち、外部との積極的な協業を通じてリスクを分散しながら短期間での成果を目指せば、この困難な状況の打開へとつなげることが可能になります。

閉ざされた開発から開かれた連携へ。変化の激しい現代、製造業にはその意識転換が求められています。

製造業がオープンイノベーションに注力する理由

製造業がオープンイノベーションを推進する背景には、技術の高度化と市場ニーズの多様化があります。自社の研究開発部門だけで全てを担うことができれば理想的ですが、現実として、そのために要する時間やコストは膨大。オープンイノベーションの拡大は、製造業界において必然的な流れと言えるかもしれません。

また、脱炭素化やスマートファクトリー、DXといった新たな潮流に対応するためには、異なる専門性を持つ外部パートナーとの連携が不可欠。自社が強みを持つ分野に引き続き力を入れつつ、外部の知見も戦略的に組み合わせることが、より市場での競争力を高めることにもつながるでしょう。

オープンイノベーション推進の手法

M&Aでイノベーション獲得

M&Aは、製造業が外部の技術や人材、事業基盤を一括で取得できる手段となることから、オープンイノベーションの有効な選択肢の1つとされています。

たとえばAI制御や環境対応素材といった新技術を持つ企業を買収すれば、製品開発の即戦力として活用が可能。事業拡大につながるオープンイノベーションの成功例となるかもしれません。

単なる生産能力の拡大にとどまらず、自社にない「革新の種」を取り込める点がM&Aの強み。売手企業の強みを活かせば、新規市場への参入も視野に入ります。

スピード感を持って製品開発や事業格段を目指す製造業にとって、M&Aによるオープンイノベーションは有効な成長戦略となり得ます。

提携やコンソーシアム

企業間の提携やコンソーシアム（共同体）も、オープンイノベーション推進手法の1つとして注目されています。競合ではなく「共創」を前提とした取り組みに着手すれば、それぞれの強みを掛け合わせることで、新たな製品や技術の開発へとつなげられるかもしれません。

たとえば、製造業とIT企業が協業することで、IoTやAIを活用したスマートファクトリーの実現が加速するでしょう。あるいは、大学や研究機関との連携によって、基礎研究を応用した実用製品の開発へと結び付けられる可能性もあります。

資金やリスクを分担しながら新分野へ進出できる点でも、提携型のオープンイノベーションは戦略的価値のある選択肢と言えるでしょう。

製造業におけるオープンイノベーションを成功させるには？

異業種連携で新製品開発

異業種連携は、オープンイノベーションの中でも特に高い効果が期待できる手法。製造業と医療、エネルギー、ITなど、全く異なる業界同士が手を組むことで、それぞれの常識を超えた新製品や新サービスの開発へとつながる可能性があります。

たとえば、センサー技術を持つIT企業と連携して工場設備を高機能化したり、異素材メーカーと共同で新たな部品を開発したりなど、異業種連携の可能性の幅は非常に広範。他社の視点を取り入れられる点はもとより、自社の強みを客観的に再発見する機会にもなることから、イノベーションの起点として大変有効です。

社外技術導入で生産効率向上

生産効率を向上させるための有効な手段として、製造現場における今までにない技術の導入が挙げられます。しかしながら、自社内で新たな技術を構築するためには、相応のコストや時間がかかることは避けられません。人材も限られていることから、導入したくても導入できないまま既存システムを稼働させている製造現場も多いことでしょう。

これを解決する現実的な手法が、社外技術の導入。外部パートナーとの連携を通じて社外技術を導入すれば、自社内で技術をゼロから構築する必要はありません。単なる技術導入に終わらず、社内での内製化や組織改革までつなげられれば、長期的な成長可能性も高まるでしょう。

変化の時代に必要なのは“開く力”

技術革新のスピードが増す中、製造業に求められているのは「すべてを自前で抱え込まない」という柔軟な発想です。自社に足りないリソースを外部と補完し合いながら新たな価値想像へとつなげる、という発想が、これからの製造業には求められるでしょう。

そのための有効な考え方の1つがオープンイノベーション。M&Aや提携、共同開発などの多様な手法を通じて企業体質を強化していくことは、製造業の成長戦略における「核」となる考え方になりつつあります。