異業種M&Aとは、自社とは異なる業種の企業を買収・統合する経営戦略のこと。製造業にとっては、既存のモノづくり領域にとどまらず、新たな技術やサービス、販路を取り込むことで、飛躍的な成長を狙えるきっかけにもなりえます。
たとえば製造業がIT企業をM&Aで自社に取り込めば、デジタル制御や自動化分野に進出できる可能性があるため、製造工程の高度化だけではなく新たな製品価値の創出が期待されます。単なる異業種参入ではなく、「自社の強みをどう拡張するか」が異業種M&A成功の鍵となります。
異業種とのM&Aを成功に導くには、「一見違って見えるものの、根幹部分での志向につながりがある」事業領域を見極めることが重要です。製造業なら「製品の付加価値を高められそうかどうか」「ユーザー接点を広げられそうかどうか」などの視点を持ち、相手企業のベース部分を理解することが大切になります。
具体的には、たとえば製造業がサービス業を取り込む事例。自社製品のメンテナンスやアフターサービス体制を強化できることで、製品の付加価値を向上させられる可能性があるでしょう。
単なる異分野での物珍しさではなく、「補完性」や「シナジーの再現性」が相手企業選定の基準となります。
製造業が異業種にM&Aで進出する大きなメリットの一つが「事業リスクの分散」です。特定分野に依存した経営構造から脱却することで、業績不振時のダメージ緩和を目指す考え方です。
たとえば、景気や国際情勢の影響を受けやすい輸出型製造業が、国内需要に根差したサービス業やIT企業を傘下に収めれば、全体的な売上構成が安定。特に近年、コロナ禍や原材料価格の高騰など予測困難な要因が多く見られ始めているため、事業多角化の重要性はさらに高まっています。
M&Aによって事業ポートフォリオを再構築することは、単なる成長戦略にとどまらず、企業の「守り」としても効果的です。
異業種M&Aでは、事業モデルだけでなく「企業文化」の違いが大きな壁になることがあります。たとえば、製造業の現場主義や品質重視の姿勢と、IT・サービス業のスピード感や自由な社風は、時に対立を生む要因にもなりかねません。
これらカルチャーギャップを放置したままでは、シナジーの実現どころか、社内の不協和や人材流出を招く可能性もあるでしょう。異業種M&Aを成功させるためには、両者の価値観を尊重しながら共通目標を明確化し、段階的に融合を進める「PMI(統合作業)」が欠かせません。
特に製造業の場合、現場の納得感を得るには時間がかかる傾向もあります。現場がM&Aに前向きになれるよう、経営陣は十分な説明を行うことが必要です。
人手不足と作業属人化を課題に抱えていた中小製造業のA社。課題から発生する生産性の伸び悩みや品質のバラつきへの対策が急務な状況でした。
自社の工程を可視化・効率化するため、業務改善系ITツールを開発していたB社をグループに迎え入れ。現場ニーズに即した技術導入体制の構築へとつながりました。
導入後、リアルタイムでの進捗管理や作業負荷の平準化が実現。IT企業のノウハウと製造現場の知見が融合し、現場主導の改善文化が根付く結果となりました。
参照元:株式会社ウィザープラス公式HP(https://www.wizardz-plus.jp/magazine/column198)
伝統的なBtoB製造業である譲渡企業。既存市場の縮小に不安を抱える中、新たな需要創出を模索中でした。
高齢化が進む社会構造に注目し、介護関連の事業基盤を持つ異業種企業と提携。成長が見込まれる新市場への足がかりを得て、医療・福祉向け製品の開発にも着手しました。
製品開発力と現場ニーズの融合で、実用性の高い介護用品が誕生。収益源の多角化だけではなく、社会貢献性の高い事業スタイルの構築にもつながりました。
参照元:株式会社M&A承継機構公式HP(https://ma-sg.co.jp/casestudy/posts/case001)
異業種M&Aは、製造業にとって単なる「事業拡張」ではなく、自社の存在価値を再定義する機会でもあります。異なる視点の導入をきっかけに、商品やサービスの意味づけを変えること。そして、社会における新たな役割の可能性を広げることが、製造業における異業種M&Aの本質です。
成功には、明確な目的と慎重な事前検証が不可欠。その工程には多くの検討や議論が必要となりますが、その努力の過程の先には、想定以上のシナジーが待ち受けている可能性もあります。
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